
注射針のゲージ一覧と選び方
注射針には、「ゲージ(G)」という針の太さを示す単位があり、医療現場では、用途に応じて適切なゲージを選ぶ必要があります。
今回この記事では、美容医療や在宅医療などで使われる「30G・32G・34G」といった極細針に分類される注射針について詳しく解説していきます。
極細針は、皮膚への圧力が少なく、刺入時の刺激が軽減されるといったメリットがあるため、主に患者の痛みや不安を緩和する目的で使用されています。
しかし、デメリットやリスクもあるため、注射針の構造やゲージの違いなどについてしっかりと理解しておく事が大切です。
注射針のゲージ(G)とは?意味と基本構造
Contents

まずは、注射針のゲージ(G)の意味と基本的な構造から解説していきます。
ゲージとは何を示す指標なのか
注射針の「ゲージ(G)」とは針の太さを表す単位で、このゲージ数が小さいほど針は太く、大きいほど細くなります。
初めて見る方には直感的に逆に感じるかもしれませんが、この表記法は古くから医療現場で定着しており、すべての医療従事者が共通の理解のもとで使用しています。
「G」は「Gauge(ゲージ)」の略で、元は金属線(ワイヤー)の太さを測る規格に由来しており、現在では医療分野において注射針に転用されています。
針の直径がゲージごとに明確に定められていることで、注射の種類、薬剤の粘度、患者の年齢や状態などに応じた針の選択が可能となります。
美容医療や糖尿病治療などでは、極細の30G〜34Gが多く用いられています。
外径・内径・長さの関係性
注射針は単に外から見える部分のサイズだけでなく、「外径・内径・長さ」の3つのバランスによって「使い心地」や「効果」が大きく変わります。
外径はその針自体の厚みを示し、内径は薬剤が通る穴の部分のサイズで、これらが用途に応じて精密に設計されています。
また、同じ30Gの針で外径が同じでも、メーカーによって内径が微妙に異なり、薬液の流れやすさなどに違いが出てきます。
一般的に、細くて短い針は皮膚の浅い部分に刺すのに適しており、太くて長い針は筋肉層にまで薬を届ける場合に使われます。
薬剤が粘性のある場合は、細いゲージでも内径がやや広めに設計されているタイプを使うことでスムーズな注射が可能になります。
G(ゲージ)とmm(ミリ)の換算表
G(ゲージ)は一般的な長さの単位である「mm(ミリメートル)」とは異なるため、ややイメージしづらいかもしれません。
以下に、代表的なゲージと外径の換算表をまとめてみました。
ゲージ(G) | 外径(mm) | 用途の一例 |
---|---|---|
注射針 18G | 約1.2mm | 静脈注射、大量輸液 |
注射針 21G | 約0.8mm | 筋肉注射 |
注射針 23G | 約0.6mm | 一般的な皮下注射 |
注射針 25G | 約0.5mm | 皮下注射、小児医療 |
注射針 27G | 約0.4mm | インスリン注射など細い注射用 |
注射針 30G | 約0.3mm | 美容注射、皮内注射、疼痛軽減用 |
注射針 32G | 約0.23mm | ヒアルロン酸注射、敏感な部位 |
注射針 34G | 約0.18mm | 微量注射、美容目的 |
G(ゲージ)が大きくなるほど外径は細くなり、負担も少なくなりますが、薬剤の粘度や注入速度には注意が必要にです。
特に30G以下の細い針は、薬剤が出にくくなる可能性があるため、薬の特性や注射の目的に応じた適切な選択が重要になってきます。
注射針の規格と基準|JIS・ISOで定められた寸法とは

続いて、注射針の規格と医療現場で使用されている注射針の選定基準について解説します。
日本と海外で違う?注射針の統一規格
注射針の寸法や表示方法には、国際的に統一された規格があります。
主に用いられているのは、ISO(国際標準化機構)が策定した「ISO9626」と「ISO7864」という規格で、それぞれ注射針のステンレスチューブや使い捨て注射針の構造について定められています。
日本では、これらのISO規格に基づいてJIS規格(日本産業規格)が制定されており、国内の医療メーカーはこの基準に沿って製造を行っています。
それぞれ針の寸法や材質、針先の形状、安全性に関する項目が詳細に定められており、注射器本体との互換性、安全な刺入性、使用中の破損リスクの低減などが実現されています。
医療現場で使われる針の条件と選定基準
実際に病院やクリニックなどの現場で使用されている注射針は、単に規格を満たしているだけではなく、さらに以下のような基準を満たすことが求められます。
【医療現場で重視される選定条件】
- 針先の形状が適切である(丸先・ランセット・三角研磨など)
- 痛みの軽減設計がされている(極細・コーティング処理)
- 接続部の互換性が高い(ルアーロック対応など)
- 異物混入や滅菌の信頼性が高い
- 日本国内で薬事承認を得ている(医療機器認証)
JIS・ISOの規格だけでなく、実際の使用現場での要望や安全性への配慮も含めて、注射針の選定は慎重に行われています。
規格があるから安心ではなく、その上で「何に使うか」「誰に使うか」によって最適な選択が必要になります。
注射針30G・32G・34Gの違いを比較

ここでは、極細針30G・32G・34Gの違いについて詳しくまとめました。
それぞれの外径・内径・長さの仕様一覧
30G、32G、34Gはいずれも非常に細い注射針であり、主に痛みの軽減を目的とした場面で使用されます。
ゲージ | 外径(mm) | 内径(mm) | 一般的な長さ(mm) |
---|---|---|---|
注射針 30G | 約0.30 | 約0.20 | 4~13 |
注射針 32G | 約0.26 | 約0.13 | 4~13 |
注射針 34G | 約0.18 | 約0.10 | 2~8 |
ゲージが上がるごとに外径・内径ともに細くなります。
長さも使用目的に応じて異なりますが、細い針ほど短い傾向があり、刺入の負担を軽減して患者のストレスを減らすことができます。
針の細さ・柔らかさ・刺入時の痛みの違い
針の細さによって、患者が感じる痛みや医療従事者の使用感は大きく変わります。
30Gよりも32G、さらに細い34Gは、皮膚への刺激をさらに抑えることができ、特に痛みに敏感な人や頻繁な注射が必要な患者に適しています。
例えば、糖尿病の自己注射、美容クリニックでのヒアルロン酸注入などに使用されています。
細いほど刺入時の痛みは少なくなりますが、柔らかくなるため、曲がりやすく薬液の流れが悪くなるというデメリットもあります。
34Gの極細針になると針が非常に繊細で、皮膚への挿入角度や速度によってはうまく刺さらないこともあるため、技術的な扱いやすさを考慮する必要があります。
また、粘度の高い薬剤を使う場合は、極細ゲージだと詰まりやすくなることもあります。
どのGがどんな用途に向いているかの目安
それぞれのゲージがどんな注射に向いているか、目安を以下の表にまとめました。
30G |
・インスリン注射(糖尿病患者の日常使用) ・皮下注射で一般的に使用される太さ ・痛み軽減と操作性のバランスが良い |
---|---|
32G |
・美容医療(ヒアルロン酸・ボトックス) ・小児や高齢者向けの低刺激注射 ・注射回数が多い場合に負担軽減 |
34G |
・極細の皮内注射やポイント注射 ・美容や繊細な部位への投与 ・皮膚が薄い部位、特に顔などへの使用が多い |
針の選定は単に細ければ良いというわけではなく、薬剤の種類や注入部位、使用者の技術にも大きく関係します。
安全で効果的な注射を行うためには、細かな違いを理解し、目的に合ったものを選ぶことが重要です。
どのゲージを使うべき?用途別の選び方

用途に応じた針の選び方は、施術の正確さや安全性、患者の快適性に直結する重要なポイントです。
使用環境や目的に応じて、注射針 30G・注射針 32G・注射針 34Gの中から最適な針を選ぶ必要があります。
筋肉注射・皮下注射・静脈注射での選び方
注射の方法によって使用される針のゲージは異なり、また、患者の体型や注射の頻度によっても柔軟に選ぶ必要があります。
筋肉注射
筋肉注射では薬剤を深く注入するため、太めで長さのある針が選ばれます。
一般的には21G~23G程度がよく使われ、30G以下の極細針は基本的に使われません。
皮下注射
皮下注射は皮膚のすぐ下に薬剤を入れるため、細めの針が適しています。
一般的には30G〜32G程度が主流で、インスリンやワクチンの接種にも多く使われています。
細い針を使うことで痛みが軽減されるため、患者の精神的な負担も少なく済みます。
静脈注射
静脈注射では注入速度や薬剤の粘度に合わせて、やや太めの針(18G〜23G程度)が用いられることが一般的です。
細い針を選びすぎると血液が逆流しにくかったり、薬剤が詰まったりすることがあるため、スピードと安定性を重視した選択が必要です。
美容医療(ヒアルロン酸・ボトックス)で使われるゲージ
美容医療の分野では、極めて細い注射針が主に使用されます。
ヒアルロン酸やボトックスの注入は、皮膚のごく浅い部分に微量の薬剤を精密に注入する施術であり、見た目の美しさを追求する分野です。
その為32Gや34Gの極細針が選ばれることが多く、細さゆえに注射の跡が残りにくく、仕上がりも自然になります。
また、顔など敏感な部位に使用することが多いため、痛みの少なさや出血の少なさも重視されます。
このような用途においては、ゲージだけでなく針の長さや先端の加工(丸先、三角研磨など)も選定のポイントになります。
32Gはバランスが良く、34Gはより繊細な部位に適していると考えられています。
在宅医療・介護など一般用途での最適ゲージ
在宅医療や介護の現場でも、細めの注射針が好まれる傾向にあります。
患者の負担を減らすことが第一に考えられており、30G〜32G程度が広く使われています。
例えば、ビタミン剤やホルモン療法などで定期的に注射を受ける高齢者の場合、痛みを減らしながらも薬剤がしっかり注入される30Gが多く選ばれています。
皮下注射であれば、32Gも十分な選択肢になります。
また、介護職の方が医師の指示で注射をするケースもあるため、扱いやすく、かつ安全性が高いことが求められます。
細すぎると針が曲がりやすいことから、現場では「患者の状態に合わせて、無理なく使えるもの」が選ばれる傾向にあります。
細い針のメリットと注意点|注射針 30G・注射針 32G・注射針 34Gを安全に使うには

注射針 30G・注射針 32G、注射針 34Gの極細針は「痛みの少ない注射」を実現する手段としては非常に有効ですが、それと引き換えに扱いの繊細さも増すため、誰でも簡単に扱えるというわけではありません。
細いほど痛くない?その裏にあるリスクとは
注射針は細くなるほど皮膚への圧力が減るため、刺入時の刺激が軽減され、患者が感じる痛みが少なくなる傾向にあります。
特に30G、32G、34Gといった極細針は、注射が苦手な人や敏感な部位への投与において高く評価されています。
しかし、細さにはメリットだけでなく見落としがちなリスクも存在します。
細い針ほど曲がりやすく、刺入時の角度や力加減によっては皮下で針がたわんだり、皮膚にうまく入らなかったりすることがあります。
また、針先が鋭すぎると、わずかな動きでも痛点を刺激してしまう可能性もあります。
針が折れやすい・薬剤が詰まりやすい時の対処法
極細針の代表である30G・32G・34Gは、材質や構造によってしなやかさが増す一方で、強度面では太い針に比べて弱くなる傾向があります。
力を入れすぎて皮膚に刺そうとすると、針がしなって曲がったり、最悪の場合は折れてしまうこともあります。
また、細い針ほど内部の空間が狭くなるため、薬剤の粘度が高い場合や冷えている場合などはスムーズに通らず、詰まってしまうリスクが高まります。
特に、ヒアルロン酸のように粘性のある薬剤を細い針で投与しようとすると、注射器に強い圧力をかける必要があり、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
このような問題の対処として、主に以下のような方法があります。
- 薬剤は使用前に常温に戻す
- 粘度が高い薬剤には、1段階太い針を使う
- ゆっくりと均等な圧力で注射する
- 針を無理に押し込まない
- 使い捨て針の交換をこまめに行う
美容医療では、32Gや34Gの針を使って顔の繊細な部位に注射をするケースが多いため、製品選びだけでなく注入速度や注射の深さなどにも十分な注意が払われています。
細さの利点を最大限に活かすには、適切な製品を選ぶことと医療従事者の丁寧な技術の両方がとても大切です。
再利用NG!安全な管理と廃棄の方法
注射針は、一度使用したら必ず廃棄しなければなりません。
感染リスクや針先の損傷による事故を招く恐れがあるため、再利用は絶対に避けるべきです。
日本感染症学会や厚生労働省も「注射針・注射器の再使用は厳禁であり、感染症予防の観点からも都度使い捨てが原則」と明確に警告しています。
極細針は特に繊細な構造をしており、見た目には問題がないように見えても、1回使用するだけで目に見えないレベルで針先が劣化します。
使い終わった針は、専用のシャープスボックスと呼ばれる廃棄容器に即座に入れ、回収業者に依頼して適切に処分することが推奨されています。
在宅医療や自己注射を行うケースでは、薬局や自治体が設置する回収ボックスへ持ち込む方法などが案内されています。
家庭で使用する場合でも、ペットボトルなどの家庭ごみと一緒に捨てるのは非常に危険です。
万が一、ゴミ収集の作業員が針でケガをすれば大きな問題になります。
細い針であっても鋭利であることに変わりはないため、安全管理の意識は欠かせません。
正しい使い方とあわせて、安全な破棄を毎回しっかりと実行することが医療安全の基本です。
よくある質問(FAQ)

ここでは、注射針 30G・注射針 32G・注射針 34Gに関するよくある質問をまとめました。
注射針のゲージ(G)の数字が大きいほど針は太くなるのですか?
いいえ、数字が大きくなるほど針は細くなります。
たとえば、30G(約0.3mm)より32G(約0.23mm)の方が細く、34G(約0.18mm)はさらに細くなります。
この逆転した関係は直感的に分かりづらいため、初心者の方は「外径(mm)」表記もあわせて確認すると安心です。
注射針の太さは患者さんの痛みに影響しますか?
はい、細い針ほど痛みが少なく感じられる傾向があります。
特に32Gや34Gのような極細針は、顔や手の甲など敏感な部位での施術に用いられることが多く、患者の心理的な負担軽減にもつながります。
細い針を選べば、すべての患者さんにとって快適ですか?
一概には言えません。
細すぎる針は薬剤の注入に時間がかかる場合もあり、症例や用途によっては適さないこともあります。
たとえば粘性の高い薬剤では、ある程度太さのある針の方がスムーズに注入できる場合があります。
医療従事者の判断が重要です。
医療現場ではどのゲージがよく使われていますか?
注射の目的や患者層によって異なりますが、30Gは標準的な選択肢であり、32Gは高齢者や小児向け、34Gは美容目的での使用が多い傾向です。
特に繊細さが求められる顔への注射では、より細い針が選ばれることがあります。
注射針のおすすめ製品|注射針 30G・注射針 32G・注射針 34Gの注目モデル

30G・32G・34Gを取り扱っているおすすめのメーカーと、取扱サイトや価格相場などについてまとめました。
医療現場で使われる注射針ブランド比較
注射針にはさまざまなブランドが存在し、各メーカーが特徴を持った製品を展開しています。
30G・32G・34Gの極細タイプは、特に医療の現場で求められる可能性が高いため、信頼性のあるブランドが好まれます。
以下に、代表的な注射針ブランドをまとめてみました。
テルモ(TERUMO) | 国内メーカーで信頼性が高く、医療現場での使用率が非常に高い。痛みを抑えるコーティング加工が強み。 |
ニプロ(NIPRO) | 多様なゲージラインナップを揃え、入手性も高い。34Gなどの極細針にも対応。 |
BD(Becton,Dickinson) | 世界的に有名なアメリカのメーカー。高品質な鋼材を使用し、滑らかな刺入が可能。 |
トップ(TOP) | コストパフォーマンスに優れ、在宅医療や介護現場でも多く使われる。 |
針の太さだけでなく、長さ、表面処理、注射器との相性なども考慮して選ぶと、より使いやすい製品を見つけることができます。
通販で購入できる信頼メーカー一覧
最近では医療機関だけでなく、自己注射を行う糖尿病患者や、美容施術を受けて自宅ケアをする人など、個人でも注射針を購入する機会が増えています。
通販サイトで購入できる主な注射針メーカーと取扱サイトは以下の通りです。
メーカー | 主な取扱サイト | 対応ゲージ |
---|---|---|
テルモ | Amazon、楽天、医療系通販 | 27G~34G |
ニプロ | モノタロウ、楽天、アスクル | 18G~34G |
BD | アスクル、Amazon | 25G~34G |
トップ | 医療用品卸サイト多数 | 21G~32G |
購入する際は、医療機器販売管理者が運営する信頼できるサイトを選ぶことが重要です。
特に極細の製品は模倣品や海外流通品もあるため、国内正規品かどうかをしっかり確認しましょう。
最後に
注射針のゲージは、使用する薬剤や注射の目的によって最適な選択肢が変わります。
特に30G・32G・34Gのような極細タイプは、痛みの軽減や見た目への配慮が求められる場面で効果を発揮します。
針の細さだけに注目するのではなく、長さや内径、製品の品質も含めてバランスよく選ぶことが大切です。
注射針ゲージの基本を正しく理解し、目的に合った製品を選ぶことが、より安全で快適な注射体験につながるかもしれません。